お向かいさんに恋をして
「秋中さん、これ……」

「ありがとう、波江さん。
じゃあ、僕は行くね。

あ、輪投げで遊ぶときは後ろにも気を付けてね」

袋をにこりと受け取った秋中さんは、いつものように手を振って爽やかに去っていった。

「はぁ、やっぱり素敵……」

秋中さんの背中を見つめて、暫く時が止まった。もやもやは消えていないけど、素直にいいなって思ってしまう。

「さ、く、ら、ちゃ~ん」

突然後ろから声をかけられてハッとした。

「き、きなこちゃん……」

振り向けばそこには、さっきまで姿が見えなかったきなこちゃんがニヤニヤしていた。

「いやぁ、なんかラッキーだったね? 
で、良いのかな?
秋中さんに会えて嬉しそうだし……」

「え、うん……?」

いやまぁ会えて嬉しくなっちゃったけど……。私、よくわかんないや。
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