お向かいさんに恋をして
注文後、お手洗いに立って戻って来た頃には既にドリンクが届けられていた。

お手洗いで目元を確認してみるとやっぱり少し赤かったけど、ほんのり照明の店内なら目立たないだろう。留奈さんの提案に改めて感謝だ。
きなこちゃんも嬉しそうだし。

「さくらちゃん待ってたよっ!
乾杯しましょっ!」

席に着くと、目の前に座る二人がグラスを手にした。私もそれにならって自分のグラスを手にする。

「乾杯っ! ええっと、さくらちゃんの新たな門出にっ!」

「留奈さん、門出ってそれ、春の出会った頃のお祝いで言って欲しかったです」

乾杯の音頭をとりだした割には何を言うか決めていなかったらしい。
春に、お友達記念やら初恋記念やら、入学記念やらの「記念」を並べて祝ってくれたことを思い出す。

「ま、いいじゃない!
じゃあそうね……新たな経験をして大人の階段をまた一段登ったさくらちゃんに乾杯?」

「長っ!」
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