お向かいさんに恋をして
「お、おい秋中?」

「お前の約束ってその子達?」

スーツの人たちに頭を下げた秋中さんは、私と留奈さんの背中を押して早歩きで駅を出た。

駅を出て道を一本曲がったところで、私たちの背中を押す秋中さんの手が止まった。

「ごめんよ、波江さんとお友達。
職場の先輩方がちょっとしつこくてね、付き合わせちゃって」

頭を掻きながら申し訳なさそうに謝る秋中さんに、私だけでなく留奈さんまでも見とれていた。

「謝ってるのに男前……!」

「頭掻いてるのにカッコいいなんて驚き!」

「………? あの、二人共?」

どうしたの、ときょとんとした顔ですらカッコいいのだから、困る。

聞けば、真っ直ぐ帰ろうとしている秋中さんを、職場の先輩方が飲み会に誘いたくて、足止めしていたらしい。
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