お向かいさんに恋をして
「この桜もいいんだけど、さくらちゃん、ん、窓際に立ってみて?」

「え? あ、はい」

わたしは留奈さんに促されて、窓際に移動した。

わっ!

目の前の桜の奥、も、桜……。

桜並木の河川敷。
それが庭からよく見えた。

「桜、だらけです……。凄い綺麗……」

「本当だね、桜、綺麗だ」

いつの間にか隣にいた秋中さんが、そう呟いた。

桜、綺麗……。
勿論分かっている、目の前の花だってこと。

わかっているけど、同じ名前を持つ自分が言われたような気がして、ドキドキしてしまった。

「こんな素敵なお庭と河川敷ががあったんですね、気付かなかった……」

私の呟きに、留奈さんが答えてくれた。

「ここ、裏通りに面しているの。
二人は引っ越してきたばかりで、表通りばっかり歩いてたのかもね」
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