お向かいさんに恋をして
言われて見れば、確かにそうかも。
同じ道ばかり歩いてた。
周囲を散策する余裕すらなかったんだなぁ。

「さぁさぁ座って、楽しくお花見にしましょうねぇ。
留奈ちゃんから電話もらってから、わたし沢山お惣菜作ったんよ?」

おばあさんの台詞に、私達は席についた。

「乾杯!」

私と大家のおばあさんはお茶で。
秋中さんと留奈さんはビールで乾杯した。

と言っても、留奈さんはもう飲み始めてしまっていたけれど。

目の前には美味しそうな煮物や揚げ物、お刺身まで並べられている。
それ以外にも色々。
急いで作ったという割には沢山の料理。

「ごめんねぇ、年寄り臭い物ばっかいで……。
やっぱりさくらちゃんくらい若い子は、こういうのより、お肉や洋食の方が好きだよねぇ?」

大家のおばあさんは、済まなそうな眼差しを私に向けた。
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