お向かいさんに恋をして
ハガキの送り主の欄には、住所も苗字もなく、ゆかり、とだけ書かれてあった。

住所も苗字も書かなくても、どこのゆかりさんか分かるくらいによく知る仲ってことだよね?

しかもわざわざ会いに来るような仲……。

「ああぁ、留奈さん留奈さん! 

恋人でしょうかっ? 
それどころか婚約者とかっ? 

はっ! 同棲してたのに転勤で泣く泣く離れ離れで帰ったら結婚しようね、とかって……」
「さ、さくらちゃん、落ち着こう?」

今度は留奈さんが食いぎみに私の言葉を遮った。

彼女にしては珍しく、少し引いているように見える。

留奈さんに勧められるまま、お茶を飲んで一息つくことにした。
って、私が出した家のお茶なんだけど。
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