お向かいさんに恋をして
「波江さん? どうしたの?」

じっと顔を見つめていると、秋中さんは戸惑ったような、困ったような、そんな表情を浮かべていた。

「あ、ご、ごめんなさいっ」

慌てて秋中さんから一歩引いた。
あの近さが、ちょっと名残惜しいけど……。

何も言わずに立ち尽くしているわたしに、秋中さんは「本当にどうかしたの?」と優しく声をかけてくれる。

本当、どこまで優しくて気遣いのできる爽やかイケメンなのだろう。

「さくらちゃん、ぼーっとしすぎ」

私の背中を押してこの状況を作って、私と秋中さんを困らせている張本人が、呆れたように出てきた。

「あ、竹井さん。こんばんは。
波江さんと一緒だったんだ?」

さも自分の部屋かのように私の部屋から出てきた留奈さんに、秋中さんは丁寧に挨拶をした。
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