運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
【枢】
不意に優姫と目が合った。
「…先生…」
甘い声で俺を呼んだ。
…なぁ、優姫。
今、自分でどういう顔をしてるかわかってんのか?
俺たちは『教師』と『生徒』なのに…
11月には”義兄妹”になるのに…
"女"の顔をするな!
俺を誘うな!
抑えきれなくなる―――
「…優姫…」
10年ぶりに彼女の"名前”を本人の前で口に出した。
そして、俺たちはどっちらからでもなく唇を塞いだ。
「んんっ…」
最初は軽く、2度目は強く。
薄らっと開いた優姫の口の中に舌を入れる。
…ダメだ。
優姫、俺を殴ってくれ!
と、心の中で叫んだ。
しかし、優姫は俺の首に手をしてそのキスを受入れた。
「んんっ…ふっ…はぁ…せんせ…っ」
「…優姫…っ」
俺はふっと我に返り、優姫の体を離す。
「先生、私…先生のことが好―――」
「ごめん。…今のは忘れてくれ」
「…っ、私のファーストキスを奪っといて…あんなキスをしといて…どうして今さら、『忘れろ』って言うの!?」
「俺たちは好き合っちゃいけないんだ!!」
「なんで!?」
「それは…」
それ以上言えなかった。
…いや、違う。
言いたくなかった。
「俺たち、11月には”義兄妹"になるんだ」なんて…
好きな女に言えるはずがない。
「…最低…!」
「おい、優姫!」
優姫は涙を流しながら、車を降りて走ってウチに入って行った。
「ごめん…ごめんな…優姫」
俺は、優姫が落として行った『四つ葉のクローバーのしおり』を握り締めて謝る事しかできなかった。