運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~


【悠】


夕方、社長室。


俺はいつものように自分のデスクで仕事をしていた。

兄貴は『教師』でもあるので、日中の社長の仕事は俺がやっている。

つまり『副社長』というのは単なる肩書きで、正確には兄貴と俺と2人で『切田グループ財閥』の社長をやっているのだ。

「遅せぇな。兄貴…」

俺は立ち上って、社長室のドアを開ける。


―――ガチャ。


ドアを開けると、秘書のオフィスと繋がっておりそこで渉は仕事をしている。

「おい、渉」

「ん、どうした?悠」

「兄貴からなにか連絡はあったか?」

「いや、ない。もうすぐ来ると思うけど…」

「そうか、あとコーヒーを淹(い)れてくれ」

「わかった」

俺はそう言って、社長室に戻った。

そして、コーヒーを飲みながら一息ついていると社長室に兄貴が入って来た。

「あっ、兄貴。遅かったじゃん」

「悪りぃ、遅くなった…」

兄貴は重いため息をつきながら、社長椅子に座った。

「いや、別に問題はないけど…学校でなんかあった?」

「別に…」


…いや、その暗い顔は絶対なんかあったろ!?


きっと、優姫ちゃんと…


俺の兄貴は10年前から、優姫ちゃんに惹かれていた。

今思えば、きっとあの真夏の出逢いは俺たち…兄貴にとって『運命』だったんだろう。

それが今、親父と優子さんの再婚で優姫ちゃんと”義兄妹”になってしまうことに兄貴は焦っている。

本当になにをグズグズしてるんだか…


「あっ、そうえば…」

俺は朝、親父に言われた事を思い出した。

「ん、なんだ?」

「親父が『今日、優子がウチに来るから枢を連れて来い』って…」

「そうか…わかった」

「なぁ、兄貴は親父と優子さんが再婚するの反対?」

「いや…そうじゃない。ただ…」

「……」

俺たちはそこまで話すと、なにも言わず残りの仕事を片付けて、兄貴と一緒にウチに帰った。



< 16 / 122 >

この作品をシェア

pagetop