運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
【悠】
夕方、社長室。
俺はいつものように自分のデスクで仕事をしていた。
兄貴は『教師』でもあるので、日中の社長の仕事は俺がやっている。
つまり『副社長』というのは単なる肩書きで、正確には兄貴と俺と2人で『切田グループ財閥』の社長をやっているのだ。
「遅せぇな。兄貴…」
俺は立ち上って、社長室のドアを開ける。
―――ガチャ。
ドアを開けると、秘書のオフィスと繋がっておりそこで渉は仕事をしている。
「おい、渉」
「ん、どうした?悠」
「兄貴からなにか連絡はあったか?」
「いや、ない。もうすぐ来ると思うけど…」
「そうか、あとコーヒーを淹(い)れてくれ」
「わかった」
俺はそう言って、社長室に戻った。
そして、コーヒーを飲みながら一息ついていると社長室に兄貴が入って来た。
「あっ、兄貴。遅かったじゃん」
「悪りぃ、遅くなった…」
兄貴は重いため息をつきながら、社長椅子に座った。
「いや、別に問題はないけど…学校でなんかあった?」
「別に…」
…いや、その暗い顔は絶対なんかあったろ!?
きっと、優姫ちゃんと…
俺の兄貴は10年前から、優姫ちゃんに惹かれていた。
今思えば、きっとあの真夏の出逢いは俺たち…兄貴にとって『運命』だったんだろう。
それが今、親父と優子さんの再婚で優姫ちゃんと”義兄妹”になってしまうことに兄貴は焦っている。
本当になにをグズグズしてるんだか…
「あっ、そうえば…」
俺は朝、親父に言われた事を思い出した。
「ん、なんだ?」
「親父が『今日、優子がウチに来るから枢を連れて来い』って…」
「そうか…わかった」
「なぁ、兄貴は親父と優子さんが再婚するの反対?」
「いや…そうじゃない。ただ…」
「……」
俺たちはそこまで話すと、なにも言わず残りの仕事を片付けて、兄貴と一緒にウチに帰った。