運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
【枢】
放課後。
「はぁ…あれは、まずかったよな」
俺は数学準備室で、コーヒーを飲みながらため息をつく。
昼休みに3年の女子生徒に囲まそうになるのは、もう慣れた。
けど、今日はなんだか逃げ場なくて…おまけに『好きなタイプは?』と聞かれて正直焦った。
優姫の顔しか浮かばなかったら…
―――ガラガラ。
「…失礼します」
と、ドアが開いて優姫が入って来た。
「おう、来たか…」
「先生、プリントはどこですか?」
…あちゃ~やっぱり、まだ怒ってんな…
「ドアを閉めて、こっちに来い」
―――パタン。
俺は優姫がドアを閉めてこっちに来ると、少し椅子のキャスターを動かして座ったまま優姫を抱き締めた。
「…枢。私、また怒ってるんだからね」
「ん、わかってる。ごめんな」
「…ねぇ、『モテる』って嬉しいものなの?」
これは、意地悪の質問だ。
「別に悪い気はしねぇけど、嬉しくもない」
「なんで?」
そう聞いてくる優姫の腕をグッと引っ張って、自分の膝の上に座らせた。
「ちょ…枢!?」
「…お前に好かれてば、俺はそれでいいから…」
「なに、それ…」
優姫は少し呆れながら、小さく微笑んだ。
「ねぇ、もう1つ聞いていい?」
「ん?」
「先輩たちに『好きなタイプは?』って聞かれて、いったい誰の顔が浮かんだの?」
「優姫、わざと聞いてるだろ?」
「うん♪」
と、優姫は俺が1番好きな笑顔で笑ってくれた。
「…じゃあ、もう嫉妬しなくてもいいくらい何度でも言ってやるよ。…俺が1番好きな女の名前は―――…」
俺はそこまで言うと、放課後の数学準備室で…優姫にそっとヒミツのキスをした。