運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
真夏の記憶
【優姫】
あれから私は、先生の腕の中でどのくらい泣いたのだろうか?
先生はなにも言わず、ただ抱き締めてくれていた。
頭を撫でだれているだけなのに、なぜか落ち着いた。
―――♪♪♪
突然、先生の携帯が鳴った。
「雨宮、ちょっとごめん」
「うんうん…どうぞ、出てください」
先生は電話に出る。
「もしもし、悠(はるか)。…ああ、今から会社に行く」
それから、すぐに電話は切れた。
「あの…今から会社に行くの?」
「ん、これから会議があるんだ。さっきの電話の相手は2歳下の弟。会社の『副社長』なんだ」
…そうなんだ…
先生、兄弟がいるんだ。
「あっ、私は帰えるね」
鞄を持って教室を出ようとした。
「ちょっと待て、雨宮」
「はい?」
「これから一緒に行くか?」
「いいの?」
「ん、いいよ。荷物と車を取って来るから裏門で待てて」
「うん」
それから、先生の車に乗って『切田グループ財閥』会社に向かった。
会社。
「切田社長」
「社長、お疲れ様です」
「社長」
次々と社員さんたちが、先生に軽く頭を下げながら挨拶する。
…うわぁ~
すごい人!!
本当に先生がここの『社長』なんだ。
「おい、雨宮。こっちだ」
後ろから戸惑いながら、歩いていると先生に腕を掴まれた。
―――ドクン。
胸がドキドキする。
「先生」
「ん?」
「手…」
「あっ、ごめん。嫌だったか?」
「うんうん、嫌じゃないです…」
…むしろ、嬉しい。
私たちは手を繋いだまま、社長室に向かった。