運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
エンゲージリングと切田グループ財閥パーティー
【優姫】
あれから時は少し流れ―――私は陸に『本当の事』が言えないまま、夏休みに入っていた。
「ふぅ~、今日はここまでかな…」
そう言って、夏休みの課題を閉じる。
―――ガチャ。
「あっ、帰って来た!」」
私は椅子から立ち上がり、玄関向かって枢を出迎える。
「お帰り、枢」
「ただいま、優姫」
そう言って、いつもみたいに軽いキスをした。
「今日はわりと早かったね。明日は『切田グループ財閥』のパーティーなのに…」
そう、明日は『切田グループ財閥』の関係会社が一同に集まって、親睦会を兼ねての立場上『会長』であるお義父さんと母さんの『婚約』が正式に発表されるのだ。
―――それは、いいんだけど…
「…なんだ、まだ戸惑っているのか?俺とお前も『婚約者』として公表すること…」
「もちろん、枢と婚約する事は凄く嬉しい。…でも、急にどうしてそんな事をお義父さんは言い出したの?」
私がそこまで言うと、ソファーに座って鞄から封筒を取り出した。
「同意書…?」
「…ん、優姫の親権を雨宮太一から義母さんへと変える同意書だ。ウチの会社の弁護士を通して送られて来た。…『DVをしていた事をネタに裁判で親権争う』と親父たちが忠告を出してたみたいだ」
「それで…サインしたんだ」
「裁判になれば、大ごとになって『雨宮グループ財閥』は大きなダメージを受けてしまうだろうからな」
「そうだね…」
私は複雑な気持ちで、書類に目を通した。
「…んで、明日。優姫は親父の”義娘”として、お披露目されたら『政略結婚をさせたいと名乗り出る者を出したくはないだろ?』って、痛い事を言われてな…」
「もう、お義父さんったら…」
「…優姫、改めて聞くよ」
「うん?」
私たちはお互いに向き合う。
「近い将来、…早ければ高校を卒業したら俺と結婚してほしい」
「はい。喜んで♪」
私は目に涙を潤ませながら、そう笑顔で答えた。
「じゃあ、これを受け取ってくれ」
枢は鞄から箱を取り出した。
「これって、今年発売されたばかりの…」
それは…今年発売されたばかりで、可愛いくて、オシャレと話題の指輪だった。
「ああ、これが俺たちの婚約指輪(エンゲージリング)。…どう、気に入った?」
「くっすん…うん」
涙を流す私の薬指に、そっと指輪が嵌まる。
…この『恋』が私の最初で最後の恋。
私たちはお互いに微笑んでキスをした。