運命のように君を愛してる~先生との赤い糸~
【優姫】
会社。
「『切田グループ』…」
陸はビルを見上げて口を開いた。
「おい、どういう事だよ」
「だから…今や優姫は『切田グループ』の令嬢なの!」
「だとしたら、切先と悠さんは…」
「切先は『社長』で悠君は『副社長』よ」
「…黙っててごめんね、陸。…『切田家(ウチ)』の事は学校の関係者には内緒だから…おじさんも陸には内緒にしててくれたの」
「優姫……」
陸はため息をついて、私を見つめた。
「はいはい、残りの話は中でしよう」
「ん、そうだな」
3人で会社に入ると、社員さんたちが私に気づいて挨拶をしてきた。
「こんにちは、優姫お嬢様」
「優姫様」
「お嬢様、こんにちは」
『雨宮家』にいた時は父さんの会社に一度も行った事がなかったし、直接“優姫様”や“お嬢様”と呼ばれる事もなかった。
…だから、まだ慣れないだよね。
「あっ、優姫お嬢様。こんにちは」
警備員さんが、私に敬礼してきた。
「お疲れ様です、森村(もりむら)さん」
森村さんは、お義父さんの友達の1人で同級生。
プライベート時は、私たち義兄妹を“枢君”・“悠君”・“優姫ちゃん”と呼んでくれている。
「しかし、優姫ちゃん。また綺麗になった?」
陸と樹里に聞こえないように、私の耳元で囁きニヤリと笑った。
「もう~森村さん!…それより、今日は友達も一緒なんだけど…」
「はい、社長と副社長から伺います。どうぞ、お通りください」
「「ありがとうございます」」
私たちは社長室に向かった。
―――コンコン。
「はい」
ドアを叩くと渉さん声がして中に入った。
「こんにちは、渉さん」
「やあ、優姫ちゃん。…そちらの2人が…」
「うん、そうだよ」
陸と樹里は、一歩前に出て挨拶をする。
「初めまして、仁田陸です」
「初めまして、一ノ瀬樹里です」
「枢と悠から聞いてるよ、俺は戸田渉。2人の親友でもあり今は秘書もやってる」
「…渉さん、悠は?」
「奥にいるよ」
―――コンコン。
渉さんが社長室のドアを叩いた。
「はい」
「悠、優姫ちゃんたちが来たぞ」
「通してくれ」
ドアを開けてもらって社長室に入ると、悠は椅子から立ち上げる。
「優姫、樹里ちゃん、陸君。いらっしゃい」
「悠君、誘ってくれてありがとう」
「どうも…。俺までお邪魔してすみません」
「いやいや、『切田家(ウチ)』のことで、驚いただろ?」
「それはまぁ…。親父の会社と提携をしているあの『切田グループ財閥』の社長が自分の『担任』だったのも驚きました」
「『も』?」
「…一番信じられないのは…」
陸がチラッと私を見た。
「兄貴と優姫のことでしょ?…優姫、どこまでも話したの?」
その質問に首を横に振った。
「…そっか。じゃあ、試食をしながら話そう」
「うん…」
私は頷いて、ソファーに座った。