僕のとなりで。
『あのさ…。』

家につくと、車から下りずに話し出すサヤカ。

『ん?』

サヤカに目を向ける。

『親からレンラク来るんだ。帰って来いって…。たとえ結婚を考えてても、同棲するなら、まず親に挨拶するべきだって…。あたし、リョウくんを悪者にしちゃったかも…。』

さっきまでの幸せそうな顔が一変して、不安げにうつむくサヤカ。

『俺が悪者だと思うのはしょうがないよ。親は心配なんだろぉし、実際、挨拶もなしに結婚するかもって…信用しろっていう方がムリだよ。…ずっと考えてて、就職したら挨拶に行こうと思ってたけど、やっぱ、そんなことより、まず親に会う方が先だよね。』

サヤカの表情は晴れない。

『弟のことは両親知らないんだよね?』

『今、その話はしたくない。』

不機嫌そうにサヤカが答える。

『いや…そうじゃなくて…。家に帰りたくない理由があるんだから…。やっぱいいや。』

僕の悪いクセだった。

話し合わずに諦めた。

『前にも言ったでしょ?親には言えないし、言うつもりない。あたしが帰らないのは、あたしのワガママ。それじゃダメなの?』

感情的なサヤカは、初めてだった。

『だから、もういいって。とりあえず、中に入ろうよ。』

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