僕のとなりで。
ギリギリ間に合った会社の前で、サヤカが降りようと、ドアに手を掛けて止める。

『ねぇ、いってらっしゃいのキスは(笑)?』

『やらない。』

ためらいなく断る僕。

『えぇ~!絶対断られるとは思ったけど、全く考えないで答えられると、なにがなんでもして欲しくなるよね!』

そう言って、顔を近づけてくる。

『あのさぁ、時間、やばくないの?』

恥ずかしくて、絶対やりたくなかった。

『大丈夫、あと5分あるし(笑)
ごまかされないよ!』

こうなったサヤカは、僕がするまで諦めない。


軽く唇と唇が触れる。


『照れて中途半端にして、乙女なチューになって、逆に、あたしドッキドキッ!てカンジだね!じゃ、行ってきます!』

自分から言い出したのに、顔を真っ赤にして車を降りるサヤカ。

『あ!荷物あるし、帰りも迎えにくるよ!電話して!』

サヤカの背中に話し掛ける。

振り返り、頷いて笑ったサヤカが、

『頑張れそう!』

そう言った。

自分の気持ちを言葉にしてくれるサヤカ。

サヤカの一言が嬉しかった。

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