僕のとなりで。
買い物中、ヒトミの母親がポロッと言う。

『カズヤくんは、かしこくてイイ子だけど、物足りないのよねぇ…。』

僕は、ヒトミの母親の方を見る。

『“なんで?”て顔してる(笑)私は、ヒトミしか産めなかったけど、本当は、男の子も欲しかったの…。ヒトミには言ってないけど、いたのよね、お腹に。産まれる前に亡くなって、そのあとは子供が出来なかった。だから、余計にヒトミに甘くなった気もするし、カズヤくんを自分の息子みたいに思っちゃうのかもしれない。』

何を言いたいのか、僕には、いまいちピンとこない。

それを悟ったかのように笑う、ヒトミの母親。

『そういう顔が見たいの(笑)もっと、感情が見たいって言うか、なんだか、良すぎて張り合いがないのよぉ~。贅沢な悩みだよね!』

そう言って、また笑った。

『カズヤは、俺らの中でも、1番大人でしっかりしてます。全部悟られる気がしたり、カズヤなら大丈夫…みたいな安心感もある。ヒトミもそうなんです。ヒトミは、しっかりしてて、思いやりがあると思ってます。似てますよ…あの2人。だからって、なんだって話なんすけど。』

フォローが上手くいかなかった。


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