伊賀襲撃前夜
「成葉っ!」
「祥之介…」
成葉は力無く祥之介に縋り付いた。
「しっかりしろっ!成葉っ!」
成葉を抱きとめながら、祥之介は五関に目をやる。
五関は既に息も絶え絶えのようだった。
祥之介は成葉を抱き抱え、五関に歩み寄り、成葉を下ろすと、仰向けに倒れている五関を抱き起こした。
「五関様…」
「成葉様…。申し訳ないが…、私は夜明けまでに…織田陣営には戻れそうにも…ない…」
やっとの事で言葉を発する五関。
「五関様…」
成葉の目に涙が溢れてくる。
「…私の為に、泣いて下さるのか…有り難い事だ…。信長様は…理由はどうあれ…約束を違う事は…許されないお方だ…。…最早…伊賀との…和平はないであろう…。お二人は…織田は目指さず…伊賀へ戻られた方がよい…。力になれず…、申し訳…なかっ…た………」
五関はゆっくり目を閉じ、静かに息を引き取った。
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