ホストの憂鬱
三章
知が去って、ムーンも活気を取り戻し始めた頃にまた事件は起こった。

それは…知り合いがお客さんだった時の両刃の剣のことだ。

その日、みくさんは一人で店にきた。オープンと同時に。

いつもならガクさんと同伴で深夜にしかこないのに。

俺はなにも知らず、みくさんの席をセットした。

みくさんは黙って座った。いつもなら「キョン、早くお酒ちょうだい」とのろまな俺をからかうのに。

俺はしゃべるのが仕事だ。たのしませる話しをするのが…

俺は昨日、テレビでやっていたお笑い番組のはなしをしようとした。

だけど―みくさんは俯き涙を流した。

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