ホストの憂鬱
みくさんが店を出るのに誰も送ろうとは、しなかった。

あのなおさんでさえ、俯き、一人で淋しそうに出ていく、みくさんを見ることすらできない。

みくさんの姿が見えなくなり、なおさんが言った。

「気持ちをきりかえて、いこう」と。

気持ちをきりかえる?

とっくにきりかえてると思った。

俺だって、同じことをしてるんだから…

おれだけじゃない。

ムーンのスタッフ全員だ。

色恋でしか、客を掴めない情けない三流ホストの集まりなのだから。

今日ほど、自分の情けなさがわかる日はなかった。

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