ホストの憂鬱
夜の九時になり、とうとうオープンの時間がやってきた。

緊張はピークに上り詰め、俺は逃げ出したいと言わんばかりに鼓動が激しく高鳴っている。

それに不安材料はたくさんあった。

オーナーやマネージャーに昨日、事務所にいた人が誰ひとりとしていない。

そう、なおさんと俺と知の三人だけだったのだ。

なおさんは店の看板の電気を入れて有線を流した。

おれのきをまぎらわしてくれたのは有線から流れる一つのバラードだった。

有線にあわして、心の中で口ずさむ、それがしだいに声をだして歌っていた。

それにつられたのか、知もなおさんも口ずさんでいた。

みんな緊張していたんだ。
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