ホストの憂鬱
それから俺は彼女に基本的な事をほとんど教えてもらうことになった。

水割りのかげんは焼酎を指二本ぶん、マドラーでまぜるのは二回半と、そしてお酒をいただくときに乾杯。

その乾杯でもお客のグラスよりも必ず下であわせることなどを。

彼女がやけにくわしいのがわかったのは自己紹介をした時だった。

「あなた、名前を言ってないわね」

「はじめまして。キョンといいます」

「そう、私は麗子、となりは私のお店のひろ子、ああ私はクラブジュリアのママだから今後ともよろしくね」

クラブのママ、俺はすべて納得した。少し高飛車なところもあり、それでいて時折みせるやさしさ、それでいて色っぽいと感じさせる。

ただ生意気なお姉さんではなくプロなんだと。

麗子さんは今の俺には理解できない事を口にした。

「なお、お店に戻らないといけないからキョンを借りるわね。ロビンに言っといて」

借りる?どう言う意味なんだ。

俺はロックで飲んだ焼酎が頭にまわり、少し酔っていた。

「キョン、行くわよ」そういうと麗子さんはドアの前にたった。

なおさんがすかさずドアを開けようとした時、麗子さんの罵声が再び、響きわたったた。

「なお、まだわからないの。あなたいいから、キョンが開けなさい」

俺はこの時、客を扉からそとに送る本当の意味を理解していなかった。

客を送る事ができるのは自分の顧客、もしくはそれになりうる客、楽しませたホストだけだった。

俺は扉をあけて「いってらっしゃいませ」と言ったら、バンっと頭を叩かれ「キョンも行くの」と言われた。

< 27 / 134 >

この作品をシェア

pagetop