ホストの憂鬱
ジュリアにはカウンターなどなく、すべてボックス席だった。

後になって知ったのだが、クラブとはボックス席だけで、カウンターのあるお店をラウンジ、またはスナックと呼ぶらしい。

俺は入口から一番近くのスモールのボックスに案内された。

スモールと言っても五人は楽に座る事ができる。

俺は辺りを見回した。まるで子供がはじめて電車に乗り、真新しい風景を窓から目に焼き付けるみたいに。

ざっと見た感じ、お客は中高年で身なりもスーツを来て、品のいいお客ばかりだった。

そして女の子に目にをやると二十歳ぐらいから三十前半ぐらいだった。

ほどなくしてウエイターが俺の席にやってきた。

「飲み物のほうはどうなさいますか?」

そんな事聞かれても俺は困るばかりだ。俺は子犬のような目で麗子ママに助けてと言わんばかりに見つめた。
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