ホストの憂鬱
俺は黙ったままグラスに口をつけては少し飲みを繰り返していた。

「グラスはなさいのね」と、麗子ママは隣で微笑みながら言った。

「いえ、そんな事はないです」と俺は慌ててグラスをコースターの上に置いた。

麗子ママは腹を押さえるようにして笑った。

「緊張してるのね、キョンはこういうところに来たことないの?」

「はい、はじめてです」

「そう、ならよかったじゃない」

よかった?何がよかったのだろうか。

麗子ママは、話しを続けた。

「あなた達ホストは私たちとはある意味、運命共同体なのよ。今はわからないだろうけどそのうちわかるわ」と、言った。

運命共同体と言ったママの意味は今の俺には理解できない。

だけど、俺は無意識でその事を実行することになる。
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