ホストの憂鬱
彼女は胸を撫で下ろし、「よかった」と、言った。

「何がよかったの?」

「同業の人だと緊張するんです。仕事ぶりをみられている気がして」

わかるような気がした。

もし、麗子ママがあのまま黙っていたなら、俺は何も仕事ができないと心の中でレッテルをはられ、つぎに会うときは、そう言う目でみられたに違いない。

そう考えれば考えるほど、俺はこの世界の恐さと面白さを感じた。

「愛ちゃんって何歳なの?」と、愛ちゃんの事をもっと知りたいと思うようになった。

「今年で二十一歳ですよ。誕生日は七月ですから」と言った。

「俺は五月で二十三になるよ」というと、「それじゃあ五月にお祝いします」と言ってくれた。

俺は普通に喜んでいたが、この世界の誕生日のお祝いとは、少し違うことをオーナーの誕生日に知る事になる。
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