ホストの憂鬱
彼女の飲み物はビールだった。ムーンのビールは缶ビールだった。

俺は「同じものをいただきます」といい、ショートグラスを彼女の前にだした。

それを無言で彼女はビールを注いだ。

「いただきます」と俺は乾杯をする。

彼女は片手でグラスをひょいとだし、乾杯をした。

余り歓迎されてないことがすぐにわかった。

だけど何かを話さないといけないと思い、彼女との共通の話題を見つけようと思案する。

行き着いた思案の結果はすごく陳腐で、わずか五分で会話が終わるという情けない結果だった。

はじめに聞いたのは歳だった。

彼女は二十歳とこたえた。

次に聞いたのがこの先の会話を続けにくくする質問だった。

「お仕事は何してるんですか?」

なんきなしに聞いた。俺はこの街に住む人の事を何も理解してなかったのに。

彼女は一瞬、表情をくもらせて、一言、ソープとこたえた。
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