ホストの憂鬱
なおさんはショートカットの女の子を気に入ったらしく、ショートカットの女の子の隣を歩いて、店につくまでに口説いていた。

それも、当然だった。

店にあがれば、ホストを選ぶ権利は当然、お客にあるのだから。

キャッチの成績だけは残るのだけど、俺達が求めているのは一回ぽっきりの客ではなく、自分の顧客だった。

ショートカットの女の子の名前はあやと言った。

俺の隣を歩く女の子はるみと言った。

俺は貪欲になれなかった。

何故なら俺はホストとして、致命的な欠点があった。

それは、好きな女の子を作ってしまったことだ。

そう、愛ちゃんの事だった。

だから俺は、るみの隣を歩いていても店まで無言でとられるならそれでもかまわないと思ってしまった。
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