ホストの憂鬱
結局、るみとの会話はあきることなく、閉店の朝六時まで続いた。

あきなかった理由はしごくかんたんで、ただ俺の機嫌がすごくよかったからにほかならない。

るみとも携帯番号を交換して、俺は飲み屋に入って初めてお客の携帯番号を聞く事ができた。

オーナーが一言言った。

「ミーティングするから店に残ってて」

ミーティング?一体、何の話しをするのだろうかと思った。

俺達は店のボックス席に座り、オーナーの話しを聞く事になった。

「ええ、まずはお疲れ様。来週の土曜はぼくの誕生日なんで、体調管理と、できるだけお客さんを呼ぶように。以上」

たったそれだけだとこの時は思った。

「それから、キョンは金曜に僕と挨拶回りに行くから、覚えてて」

「はい」

挨拶回りとは何の事だろうか?

俺はお酒の酔いもあり、オーナーの言った意味が理解できないが、「はい」とだけ、返事をしておいた。

ただこの日は帰りのバスの中で、愛と登録された携帯のメモリーを家につくまで眺めていた。

正確には、寝付くまで俺は眺めていた。
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