ホストの憂鬱
一通り配り終えたのか、ロビンさんが携帯を取り出し時間を見て言った。

「十二時かあ、ジュリアに寄ってくか?」

俺は思わず笑顔になった。

その表情を見逃さないのがオーナーだ。

「愛ちゃんとはどうなの?」と、ちゃかすように聞いてきた。

「こんど映画みにいきます」

「そうか、本気なのか?」

ずけっと聞く人だな。少しは遠慮してほしいくらいだ。

「たぶん」

そうごまかした。

俺は恥ずかしいわけではないが、どうも自分の本心を人に打ち明けるのは苦手だった。

八年の付き合いのある知でさえ、俺の事がわからないと言うくらいに。

「メイビーね」

そう言うとロビンさんは俺の顔を一瞬みて、ほくそ笑み、ジュリアに向けて足をすすめていた。

ロビンさんにとっても、麗子ママは特別な存在にちがいない。
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