ホストの憂鬱
五、四、三、二、一、とみんなが声をあわせ、一斉にハッピーニューイヤーとスキー場がゆれんばかりに言った。

それと同時に花火が打ち上がる。

その光景を見ている人たちにのどこにミレニアムに起こるであろうとされたコンピュータバグを危惧している人たちがいるのだろう。

かくゆう、俺もそんなことはきにしない。ただ隣にいる、ゆみの顔が花火の発光する色により、鮮明に俺の目に焼き付いていた。

「ねえ。キョンはシーズンオフになったら何するの?」

ゆみは俺の手をしっかりと力強く握って言った。

「また職さがしだね」

「アハハ、わたしもだよ。キョンは接客がむいてるよ」

「なんで?」

「なんとなく、かな。飲み屋がいいよ。テレビで昨日やってたから」

「なんだよ、それ」

「絶対カッコイイから、広島で待ってて」

その一言が俺の人生を決めた。

あっという間に三ヶ月がすぎて、ワンシーズンのバイトが終わりを告げた。

俺は広島行きのバスに乗り、ゆみは九州行きのバスに乗った。

これが最後にゆみを見るとはおもいもせずに。
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