ホストの憂鬱
俺は、なおさんの言われたとおりに、周囲を見渡した。

不思議だった。

放置状態のお客は、いつもならふて腐れているのにみんな各々でお酒作り、普段なら、お客どうしで話しもするはずないのに楽しそうに話している。

それに、よく見れば、昨日、挨拶回りに行ったお店の人達の姿が多かった。

なおさんは言った。

「な、今日は特別なんだよ。今いる、お客さんのほとんどが同業者で、みんな理解してくれているんだよ」

「理解?」

「そう、これだけのお客をこのスタッフの人数でまわすのは無理だからな。それに、これはお互い様、俺達も同じことをしなければいけない」

そんな話しをしてると割って入ってきた人物がいた。

「なおのいうとおりだよ」

「マスター!」

そう、トラッシュのマスターだった。

「昨日はありがとうね。それにしてもつめたいな」

「えっ」

「キョン、全然気付かなかったろ?しかも昨日の女の子、今日はみんな気付かないかもしれないけど、気をつけろよ」

トラッシュのマスターの言った意味は理解できた。俺は愛ちゃんをお客として見ていない。

それはお互いにとって致命傷だった。

麗子ママはジュリアのお客さんとアフターとして、来ていたから。
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