黒龍Ⅲ
「強くなりたいと思う理由は?」
「"守りたい人がいます。"」
…守りたい人…、
「それは、どんな人?」
「"僕よりもずっと強い人。
だけど
本当は誰よりも弱い人。"」
…温かい瞳でペンを動かす蛍。
蛍の言葉
ひとつ、ひとつに
なぜか涙が溢れそうになる。
「最後に、
守りたい人のために
自分を犠牲にするようなこと
…蛍は絶対にしないでね」
「"その約束は出来ません。
その人の幸せが僕の幸せです。"」
…その人の幸せが僕の幸せ、
「…」
…、前に同じようなことを竜聖に言われたな。
『麗さんが居るから
みんな幸せなんです。』
「…蛍、これからよろしくね」
蛍の持つ懐かしさ、言葉、雰囲気、
全てに涙が溢れた。
初対面なのに
泣いているところを見られたくなくて
あたしはそう言うと、
静かに部屋を出た。