黒龍Ⅲ






伊織の言葉は
なぜかすごく説得力があって

そういうことか、と納得する。



「…この前麗

 鬼神組を潰すために、
 大切な人たちを守るために、

 白龍に来たって言ったでしょ。




 …

 守るためってどういう意味なの?」



申し訳なさそうに
困った顔をした伊織。

突然と言えば突然で、
だけどいつかは聞かれるだろうなと思っていた。

そのせいもあってか、



「…お父さんを殺したのは鬼神組だって、
 話したよね。

 黒龍総長であり、
 天竜組次期会長だったお父さんは

 仕事で鬼神組に潜入することになったの。

 その時お父さんは、
 黒龍に危険が及ぶかもしれないって
 無理と黒龍を突き放した。

 もちろん、あたしたち家族も。


 …だけど、
 お父さんの正体がバレて

 結果的には………。


 …そして海龍として、
 姿を隠し続けていたあたしも
 正体がバレた。

 
 その時、崎沢に言われたの。

 『黒龍には翔司と同じ道を
  歩んで頂きます』

 白龍総長にならないかと誘われ、
 あたしには断るなんて選択肢は無かった。


 だから黒龍と獣牙を突き放した。
 

 
 そうすることでしか、
 みんなを守れなかった。


 …これが、
 あたしに出来る精一杯のことなんだ」



意外にも、
落ち着いて話をしている自分が居た。


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