黒龍Ⅲ






そっと、伊織に目を向ける。


「…麗は白龍が憎い?」


俯いたまま問いかけられた質問に、


「…憎いよ。

 でもそれは、
 伊織や凪に対してじゃない。



 全部、全部、
 崎沢に抱く感情だよ。



 前にも言ったけど、
 今は本当に大切な存在なんだよ。

 伊織も、凪も、みんな。


 だからほら、
 こうして白くすることも出来た」


そう言って、
左の小指を見せる。


「…だけど、

 
 いつかはその白はなくなるでしょ。


 
 …黒龍に、
 みんなのところへ戻る日が来るでしょ」


俯いていた伊織は
今すぐにでも泣きそうな顔をする。



「…鬼神組を潰す。


 今はただそれだけだよ。
 

 
 …戻りたい、そう思うことは
 今も昔も変わってない。
 
 みんなの笑顔が見たい。
 みんなにごめんねって言いたい。
 
 みんなに、大好きって言いたい。


 みんなに、
 もう一度一緒に居させてって言いたい。


 
 …でもそれは、
 今やるべきことじゃ無いの」



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