黒龍Ⅲ
「あたしじゃ…、
誰ひとり救えない。
…お父さんも、黒龍も、
…白龍も…っ」
結局あたしはあの日、
お父さんを失った日から
一歩も前に進めていない。
何よりも大切だった黒龍を
あたしのせいで危険な目に遭わせて
こうして離れることでしか守ることが出来ない。
そして
こんなあたしを認めてくれる、
信頼してくれる白龍に
黒龍を押し付けて、
無理やり笑顔作らせて…
「…あたしがあの時、
殺されてれば、良かった……」
あの時、
お父さんじゃなくて
あたしが殺されていれば
きっと黒龍のみんな、
壮樹さんたちが後悔することもなかった。
悠さんのお父さん、
おじさんが罪悪感を抱えることもなかった。
お母さんが、お兄ちゃんが、
涙を流すこともなかった。
…お父さんの存在はとても大きくて、
それに比べてあたしはこんなにも弱い。
大切な人すら、守れない。