黒龍Ⅲ
バシッ---…
あたしが小さく呟いた瞬間、
頬に走る衝撃。
「…え…、」
さっきまでの笑顔が嘘のように、
怒った顔であたしを見つめる蛍。
頬を叩いたのは、
紛れもなくその蛍で。
「…な、んで…」
戸惑いを隠せないあたしを、
力強く抱きしめる。
「ッ…、…」
静かなこの空間に響く、
蛍のかすれた泣き声。
…まるで、声を抑えているような。
すると、
バッと勢いよくあたしを離したと思ったら
置いてあったスケッチブックに何かを書き始める。
「"ひとりじゃない"」
スケッチブックに書かれた文字。
あたしはその言葉でまた涙が止まらなくなった。