黒龍Ⅲ





「…ごめんね。

でも、
あたしを信じて欲しい」


「…無事で帰ってきてね」


納得いかない、
そう顔に書いてあるふたり。


だけどそれだけじゃない。


あたしが黒龍の話をする度に、
ふたりは同じ顔をする。



その顔を見た瞬間、

ふと
今のあたしは白龍なのに、

黒龍のことは
忘れないと、と

頭に浮かぶ。


……



「…本当にごめん。


これが、
最後だから」



今のあたしは、
もう黒龍じゃない。

もう…海龍じゃない。






今日が終わったら
黒龍のことは忘れよう。



最後の恩返し。


たくさんのありがとうを込めて、
最後にみんなの顔見れたら



そしたら、






………忘れよう。









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