黒龍Ⅲ
…−−−
目の前にあるのは
半年前まで毎日のように足を運んでいた
黒龍倉庫。
大切な場所、だった。
外観は何も変わっていないのに
こんなにも騒がしい倉庫は初めてで
早く助けに行かないと、と
頭で急かす声がする。
それなのに、一歩が踏み出せない。
ドクンとわざとらしく波打つ心臓、
熱くなる目頭、
上手く息ができなくなる。
あたしが行って何ができるんだろう、
助けられないかもしれない、
…あたしの顔なんて見たくないかもしれない。
裏切ったのは紛れもなくあたしなのに、
今更助けに行ったって迷惑なだけかもしれない。
考えれば考えるほど、足が動かなくなる。