黒龍Ⅲ





「…!」


急に視界が真っ暗になったと思ったら
右腕を強く引っ張られる。


蛍は勢いよく
あたしのパーカーのフードを被らせると

「”ダイジョウブ”」と、

笑顔であたしの手を引いてくれた。


その笑顔で力の入っていた足がふわっと軽くなる。






「…これが本当に最後、
 最初で最後の恩返しにするから」



小さく呟いた後
深呼吸をして、倉庫の扉に手をかけた。





---…



倉庫内には、
案の定鉄パイプやナイフを手にした闇天狗と
そんな闇天狗に負けを取らない黒龍。


さすが、と安心したのも束の間


あたしと蛍に気付いた闇天狗が
鉄パイプを振り回しながら走ってくる。



「気をつけてね」



蛍に声をかけると

あたしは男が振り上げた鉄パイプを掴み、
そのまま蹴り上げる。



「ゴフッ…」



痛みに顔を歪め、倒れこむ男を横目で見ながら
次から次へと向かってくる闇天狗をひとり、ひとり倒して行く。



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