黒龍Ⅲ
「本当に、ごめん…」
涙を拭いやっとの思いで絞り出した言葉、
そしてみんなの顔を見る。
「…っ!」
だけど、
気付いてしまった。
そして脳裏に浮かぶ崎沢の笑顔。
”「黒龍には翔司と同じ道を
歩んでもらいます」”
…智貴が、居ない…。
あたしが崎沢の元に来て約半年。
みんなを傷つけたくなくて、
あたしはこの道を選んだ。
それなのに、智貴を傷つけてしまった。
大切な、
何よりも大切な黒龍のみんなを
これ以上傷つけちゃ駄目だ。
「…
みんな、本当にごめん。
もう、あたしには関わらないで欲しい。
…あたしのことは、忘れてっ…」
何度も拭ったせいで赤みを帯びた瞼。
それでも我慢していた涙がこぼれてしまうと、
あとはもうとめどがなかった。