黒龍Ⅲ
「…っ、
どうしてっ…!
ちゃんと話してもらわないと
納得できません!」
珍しく声を大にする竜聖。
それに続き、みんなが次々と困惑の声を上げる。
「…本当にごめん」
ただ謝ることしかできない、
頭を下げたままのあたしの手をとったのは
蛍だった。
「っ!ちょっと…!」
みんなが慌てているのも知らん顔で
あたしの手を取り、そのまま走って倉庫を出る。
バイクの後ろに乗せられ、
ヘルメットを渡されるとエンジンがかかる。
追いかけてくる大好きなみんなの姿がどんどん小さくなる。
恩返しがしたくて来たのに
また、裏切ってしまった。
また、みんなから嫌われてしまった。
鬼神組を倒せたとしても
もう、黒龍には戻れないだろう。
「…だけど、これでいい。
ねえお父さん、あたし間違ってないよね」
涙は未だ止まることを知らず、
蛍の背中を濡らしていく。
風に打たれ、前がよく見えない。
…あたしは静かに目を閉じた。