黒龍Ⅲ
だけど
その温かさを心地よく感じる反面、
みんなの笑顔が、
泣き顔が、
悔しそうな顔が、
…駿を殴った時の
今にも涙が溢れそうな、
だけど
すべてを諦めたようなあの顔が
ぎゅうっとあたしの胸を締め付ける。
…っ、
「…ごめん…、
…ごめんなさいっ…!」
気づいたら零れる言葉に
「…大丈夫?」
困った顔をしてそう言った伊織は
あたしの涙を優しく拭う。
…その優しさが
もっと、もっと
あたしを苦しめることも知らずに。