黒龍Ⅲ
そんな時、
「そういえば総長って
小指、塗らないんすね」
ひとりの下っ端が
そう言って自分の小指を指さす。
「…っ、」
そう、
白龍は左手の小指を白く塗るという
決まりがある。
「…総長?」
「…ま、まだ
白のマニキュア買ってなくて…っ」
部屋にひとつだけ置かれたマニキュア。
それは
崎沢が用意していたと思われるもので
本当はいつでも塗ることが出来た。
「もっと早く言ってくれれば良かったのに!
マニキュアなら、
買わなくったってここにあるよ」
そう言って
凪は嬉しそうに近くにあったマニキュアを
あたしに渡す。
…、
そのマニキュアを受け取ることが
出来ないあたし。