黒龍Ⅲ






「…、」

黙り込むあたしを見て、

「獣牙には敵わないでしょうか」

そう言って
崎沢特有の全てを見透かしているような、
その笑顔を浮かべると

「僕も早くピアスを
 返したいんですよ。

 全国№1になるの、
 楽しみにしてますね」

そのまま部屋から出て行ってしまった。




「…獣牙って…、」

ひとり、小さくため息をつく。


みんなの顔を見た瞬間に
溢れ出す涙も、

もう白龍に戻れなくなることも、

目に見えていて。



そもそも、
今の白龍じゃ獣牙には勝てない。




「…会えないよ…」




そんなあたしの気持ちなんか関係なく
その日はやって来てしまうのだった。




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