黒龍Ⅲ
「麗、」
倉庫のソファに
座っていたあたしの隣に
そっと座った伊織。
「どうしたの?」
なぜか悲しそうな顔をしていて。
「今日…、
勝てるかな」
そう、
今日は獣牙に乗りこむ日。
不安そうにあたしを見つめる
伊織の手は
微かに震えていて。
その姿を見て、
どうしようもない罪悪感に襲われる。
…
「…獣牙は強いよ…」
小さく呟いたあたしを
見つめ続ける伊織。
そんな伊織を励ますように
「だけど、
あたしたちだって強いよ」
そう言って
精一杯の笑顔を向ける。
…
不安なのはあたしだけじゃない、
みんな同じ。
そう分かっていても
今にでも涙は溢れてきそうで。
「ありがとう」
そんなあたしに
伊織はまだ震えている手で、
「行こう」
あたしの手を取った。