黒龍Ⅲ
ぽた、ぽたと
一度流れ出した涙は
止まることを知らず、
「…麗」
あたしを心配する伊織の声さえ
今は雑音でしかない。
…お願い、お願いだから…
「…もう、
あたしに関わらないで」
…思い出す度に
苦しくなって涙が頬を伝う。
白龍という大切な場所、
大切な仲間が出来た。
何一つ不自由なんてない。
そう分かっていても
…どうしても
黒龍を、求めてしまう。
竜聖、悠さん、智貴、浩貴
駿、遥、優真、隼人
みんなともう一度、
笑ったり、泣いたり、怒ったりしたいって。
「…行こう」
伊織に手を引かれ
あたしはゆっくり、ゆっくりと
獣牙倉庫を離れていった。