恋愛スキルライセンス
始業式もおわり、ホームルームが始まる。
母校からの進学者は俺だけで、この学校にいるみんなが俺のことを知らない。
それでいい。
そのためなら、少し家から遠いけど、電車で通う意味もある。
中学時代の成績のおかげで授業料も免除だし、いうこといわれることなしだった。
その日の放課後もくだらない話が勝手に耳に入る。
「昨日もさあ、彼氏に待たされてさあ!」
「もう別れたいんだよねー。」
「なんであんなやつのことすきなんだろ…?」
「いいやつなんだけどね…」
「前つきあってたヤツなんかねー…。」
女子なんてくだらないな、いや、かわいそうなんだよな。
男が勝手なことばかりするから。
でも救おうとしても俺にはなにもできない。
話を聞いて、意味のない希望を与える。
そんなことほんとは誰にでもできる。
聞き上手か聞き下手なだけなんだ。
話が聞き上手ということは苦労の始まりなんだ。
だから俺はなるべく静かにしておくのさ。
下らないカップル達、彼氏彼女がいないものたち、そんな若い集団の中、俺だけ一人大人、いや、オヤジのような考えでいる。
けど、これが人間の真理なんだ。
みんなこういうことを超えて大人になっていくんだ。
もっとも俺はそんなのはごめん、という気持ちだった。