恋愛スキルライセンス
「相変わらずクールだな、お前。」
そう、放課後いつも話しかけてくるのはこの男、慎二だった。
アホそうでちゃらんぽらんに見えるが、実は校内での成績は一位であり、俺の上をいく万能野郎だった。
同じような成績でもやっぱり性格は変わってくるらしい。
来るもの拒まず、去るもの追わない俺はほぼ毎日コイツと帰っている。
アホでも優秀は優秀、話が合う面はあった。
だから俺は少しだけこいつには気を許して話すこともある。
けれど恋愛についての下らないことは理解してもらえない。
実はこいつの彼女はとんでもない馬鹿でドジな学年1のブスなのである。
こいつ自身顔はハンサムなんだからもっといい女子と付き合えると思うんだが、やはり理想なカップルなんてそうそう登場しないらしい。
学年一のトップでさえこのざまなんだからな。
俺は一人ニヤリとしていた。
「うん?何笑ってんだ圭一?」
「なんでもないよ、さあ帰るぞ。」
そう、これでいい…。
これでいいのかは分からないが、少なくとも辛くはない。
いつもと変わらない平和な悠久の下校、俺はこれを望んでいたのだから。
しかし、この悠久が今日で終わることを、このときの俺は微塵も思っていなかった。