恋愛スキルライセンス

「人生が辛いのも、どこにも行きたくないのもなんでだか思い出せないときがある。記憶は入り乱れてて私の中にはなにもないの。」



花蓮も少しずつ口をきくようになってきた。



「掃除したり、圭一と一緒にいると、気持ちと記憶を整理できそうな気がする。」





「さっきの写真も思い出した。私は野球部のマネージャーで、そのとき大好きな人がいた。それで付き合い始めた。」




記憶が、めちゃくちゃだったのか。



それで魂がぬけたみたいに無表情だったのか。




「彼と付き合ってた頃は幸せだった。でも中学三年生のとき、裏切られた。」




裏切られた?






「普通に部活だと思ってた。最後の大会の日、私はその人に部室に呼び出された。それで、それからたくさんの部員の人がきて、」






「たくさんの部員の人がきて、私を思い切りおさえてた。それで服とかも脱がされて、それで…。」











「それで、それで、うっぐ…。」





花蓮…?






「あれ?うっ…、うっ…。」





花蓮の目からは涙がポロポロとこぼれていた。



それでいてこちらを見ながらさっきみたいに笑顔の練習をしている。




「ごめん、圭一、うっ、うっ、笑顔、できない。逆に泣いてしまってる。」










俺は少し花蓮に近づいてソッと頭をなでてやる。




「分かった、もうそれ以上いわなくていいし、笑顔の練習もいい。喜怒哀楽できたお前は成長したよ。」




「うっ…うっ…。」




泣きながら嗚咽する花蓮。





「悲しいときは悲しく、嬉しいときは嬉しいでいいんだ。だから今は泣いていいんだ。」







俺がそう言うと、花蓮はしばらく号泣していた。





やがて、落ち着きを取り戻し、元の無表情に戻った。








「私、中高一貫で、高校生になってもその人に呼び出された。だから学校にいきたくなくなったのかもしれない。」





…。





花蓮は女子にいじめられてたわけじゃない。



その野球部員達にひどいことされてそれで記憶障害を引き起こし、魂まで抜かれたんだ。









「ありがとう花蓮、お前のこと、まあまあ分かった気がする。いつか俺が元通りお前を笑顔にしてやるからな。」




原因というものは案外単純なのかもしれない。



人はマイナス思考に陥ったとき、余計な事まで考えてしまう。






原因が分かった俺にいまできることは…!
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