いちごみるくと恋わずらい
唇からこぼれた音に、委員長の首は更にかしげる角度を深めた。
「……なに? ち?」
「近いですーーっっ!!」
「うわっ!?」
きっとこれが漫画の世界なら、背景に大きく、ドーン、という効果音が飾られていたに違いない。
「痛ってぇ!!」
ありったけの力を込めて委員長を突き飛ばした私は、しりもちをついてしまった委員長が痛がる声を背中に感じながらも、その場から脱兎のごとく逃げ出していた。
私、どうして逃げてるんだろう。
自分で自分がわからない。
……本当、全然わからない。
けど!
「なんか、恥ずかしい……っ!!」
────逃げ込むように入った校舎の中に、ふわりと吹きこんできた春の風。
蕾にまざって、まだ咲き始めたばかりの桜の花びらが一片(ひとひら)、暖かなその風に誘われて校舎に入ってきてしまったようで、ぽつりと床に落ちていた。
「……はーっ」
普段運動なんてしないから、少し走っただけで息が上がる。