いちごみるくと恋わずらい



「モカ!おっはよう!あたしたち、また一緒のクラスだね!」


生徒用玄関で丁度靴を履き替えていたらしい親友が、校舎に駆け込んできた私を見て嬉しそうにそう言った。


「……あれ、なんか顔赤くない?」


指摘されて、慌てて首を横に振った。


「は、ははは走ったから!!」


「……本当に大丈夫?」


「あ、あはははは、やだなぁ、名桜(なお)ちゃん。全然大丈夫だよ?」


必死に平静を装いながら、名桜ちゃんの隣に見つけた、自分の名前が書かれた下駄箱にローファーを突っ込んで、履きかえる。


……こんなに心臓があわただしい新学期、初めて。


「そう?……ま、モカが変なのはいつものことだしね!」

「えー!?名桜ちゃん、ヒドイ!」



『変なヤツ』

名桜ちゃんの言葉に連動するようにさっきの委員長の声が頭の中でフラッシュバックして、心臓が一度、どきんと揺れた。


「ああ、もうっ!!」


「わあっ、今度は何!?」


「なんでもないっ!」



微かに芽生えた知らない気持ちがなんだかむずがゆくて。

そんな妙に胸が騒ぐ感覚を振り払うように、私は新しい教室へと歩みを早めたのだった。


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